東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1558号 判決
(抄録)
控訴人(鈴木世喜子)は、たとえ控訴人の実母である鈴木菊代が控訴人の法定代理人として、訴外長塚龍郎の被控訴人よりの金銭消費賃借並びに本件不動産に対する抵当権及び賃借権設定に関する契約を締結するに当つてその承諾を与えたとしても、右鈴木菊代の行為は未成年者である子の財産に対する親権の行使として子の利益と相反する行為で、このような場合は民法第八二六条の規定に従い親権を行う者はその子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないことは明らかであるから、その手続をとらないでなした親権者鈴木菊代の前記承諾は、子たる控訴人に対しては効力を生じないと述べた。
被控訴人(株式会社第一相互銀行)は、民法第八二六条にいわゆる利益相反する行為というのは親権者が未成年の子を代理してなす行為か親権者のために利益で、未成年者のために不利益な結果となるべき場合を総称するものと解すべきであるが、親権者が未成年者を代理してなす行為自体を観察して右の如き結果を生ずるものと認め難い限り、たとえその行為の動機若しくは縁由の点において一方のために利益で他方のために不利益なものがあつたとしても、これをもつていわゆる利益相反する行為とはいえないから控訴人の主張は理由がないと述べた。